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「知音-could you notice?-」

「What do you think?(何を考えているんですか?)」

粗方の事情を説明すると、電話越しの声は、怒りを通り過ぎて呆れを含んでいた。
「…自分でもそう思う」
「…二次元で動物を拾えばフラグが立ちますけど、三次元じゃ何も起きませんよ」
ぼそりと呟いた言葉の意味がわからず、聞き返す。
「は?」
「いえ、戯言です」

嘆息を吐いて、ルートヴィッヒは言った。
「…昔のことを、思い出したのかもな」
「…まあ、過ぎたことを言っても始まりませんし、これからの話をしてもよろしいですか?」
「ああ。頼む」
「恐らく、奴らが彼を狙う可能性は、非常に低いかと。所詮奴らの目的は裏切り者の粛清。しかも、証拠品は全て燃えてしまいましたからね」
「…悪い」
なんとなく罪悪感にかられて、謝ってしまった。
「いえ、構いませんよ」
朗らかに返されると、余計に恐怖を感じるのは何故だろう。

「確かに、彼の家族を助けられなかったのは痛いですが、ほとんど内部情報は掴んでいたようなものですし。それに…」
「なんだ?」
「彼の家族が死んだことが、何よりの証拠です」
取引先は信頼性に欠けると、言っていたことを思い出す。
「本題に戻りますが、このまま警察に引き渡しても、問題ないと思います。一応、それまで警護はしてくださいね」
「…了解した」
「以上です。ご武運を」
通話は切れて、ツー、ツーという音だけが虚しく響いた。







フェリシアーノがシャワーから出ると、ルートヴィッヒは眉間に皺を寄せて、何か考えこんでいるようだった。
「…ルート、どうしたの?」
「あ、いや、何でもない」
そう言うルートヴィッヒに、フェリシアーノはどことなく距離を感じた。
「…そっか」
俯くと、濡れたままの髪から水滴が落ちる。

「…フェリシアーノ」
「なに?」
フェリシアーノは、ぱっと顔をあげて、ルートヴィッヒと視線を交わす。
「…その……」
重い口をなかなか動かさないルートは、必死に言葉を選んでいるように見えた。
「…悪い」
「?いいよ。俺、ルートが話してくれるの待ってるから」
「…そうじゃない」
「え?」

何が、違うというのだろう。
一応頭を巡らせてはみるが、全く見当もつかない。

「……家族が、いなくなるのは辛いな」
ルートヴィッヒの発言に、不意をつかれたフェリシアーノは、再び顔を床に向ける。
「………いよ」
「え?」
「ルートには、わかんないよ!」
苦しみを全て吐き出すかのように、フェリシアーノは叫び声をあげた。
「…そう、だな…」
「…わかっ、た…ような、口、きかない、でよ……」

嗚咽を漏らしながら、たどたどしく言うフェリシアーノをなだめるため、ルートヴィッヒはその背中を優しく撫でてやる。
「…すまない」
フェリシアーノは、ただただ涙を流し続けた。
それを見ていたルートヴィッヒが、呟きを漏らす。
「……俺も…」
よく聞き取れなかったため、聞き返すフェリシアーノ。
「え?」
「…俺も、家族を殺された」
視線を交わすフェリシアーノの目が、驚きに見開かれる。
「…そう、なの…?」

フェリシアーノから目を逸らして、ルートヴィッヒは続ける。
「…もう5年ほど前の話だ」
一気に冷えた静寂に包まれ、フェリシアーノは再びフローリングの床を見つめた。
「……ごめんなさい」
「どうして、謝るんだ?」
心底不思議そうにルートヴィッヒは訊ねた。
「…なんでだろ…。わかんない。けど……ごめん」
フェリシアーノがたどたどしく謝ると、ルートヴィッヒも申し訳なさげに言った。
「…悪い。余計なことを言った」

顔を上げずに、フェリシアーノは呟く。
「……余計なことじゃ、ないよ」
「え?」
「…俺、ルートのこともっと知りたい」
瞳から溢れていた涙は、既に止まっていた。
床に落ちた残滓だけが、灯りに照らされて光る。

「ルートと、友達になりたいんだ」

直線的な言い方に、ルートヴィッヒは戸惑いを隠せない。
「…そう、か」
フェリシアーノは僅かに顔をほころばせて、頷いた。
「…フェリシアーノ」
変わらず暗い表情のまま、ルートヴィッヒは話を切り出す。
「何?」
「俺は、お前の父親の取引相手だ」
「…え?」

感じていた嫌な予感と一致するその言葉から、フェリシアーノは、無性に逃げ出したくなった。
「気付いていたとは思うが、お前の父親はあるマフィアの構成員だった」
「……」
フェリシアーノが口を閉ざしたままでいると、ルートヴィッヒは話し続けた。

「お前の父親は、足を洗おうとして、俺の組織に情報をリークし…」
「…やめて」
やっと口の筋肉が感情に追いついたらしく、フェリシアーノは震える声で呟いた。
「それが明るみに出て、始末されたんだ」
だが、ルートヴィッヒは懺悔にも似た告白を止めない。
「やめてってば」
「お前の両親を護ること。それが、俺の任務だった。だが、俺は結局任務を遂行できなかった。だから、お前の親が殺されたのは、俺の所為…」
「違うよ」

遮ったフェリシアーノの声は、どこまでも澄んでいて。
「父さんと母さんを殺したのは、ルートじゃないんでしょ?ルートは、何も悪くない。それくらい、俺だってわかるよ」
その透明な声で紡ぎ出される言葉に、ルートヴィッヒは息を飲んだ。
「っ……」
「だから、謝ったりしないで」
「…わかった」

ルートヴィッヒは、フェリシアーノの精一杯を受け止めて、苦笑した。
床を濡らした滴は、既に消えているようだった。


あの火事は、一家殺害事件として、イタリアの地方紙の片隅を飾った。
父と母は、焼死体で見つかった。だが、兄の遺体は、見つからなかったらしい。

はい、終わりました。
ロヴィとフェリは二人で一つの過去編ですね。二人はこのお話の中では双子設定です。
双子だから、生まれた時から片割れがいて。片割れのことなら誰よりも良く知ってる。
お互いがお互いのことを一番良くわかっていると、思い込んでいるのが彼らかと思っています。
思い込みって、恐ろしいですね(笑
因みに私は、親父がかなり好きです。親父とお母さまの関係ににやけが止まりません。

しょうもない話はここまでにして、ここからはオマケです。

ギャグ注意!
パロディ注意!


「父さんと母さんを殺したのは、ルートじゃないんでしょ?ルートは、何も悪くない。それくらい、俺だってわかるよ」

その透明な声で紡ぎ出される言葉に、ルートヴィッヒは息を飲んだ。
「っ……」
「だから、謝ったりしないで」
「…悪い。こんな時、どんな顔をすればいいのか、わからないんだ」
「…笑えば、いいと思うよ」

ルートヴィッヒは、フェリシアーノの精一杯を受け止めて、苦笑した。
床を濡らした滴は、既に消えているようだった。

はい。エヴァネタですw
やってみたくて仕方なかったんです。
お粗末さまでした!